⑤高岡のお茶会(1)

今回は、高岡の茶道についてお話をしたいと思います。高岡は比較的茶道が盛んな町と言えますが、その中でも特に歴史があるのは「藪内流」です。これは、越中では古くから浄土真宗が盛んで、本山である浄土真宗西本願寺の茶道の藪内流が寺院を通じて広まったものと考えられます。一回目に高岡の町を開いた加賀藩二代藩主前田利長公の事について述べましたが、今年は利長公が高岡の地に城を築いて入城した慶長一四年(一六〇九)から丁度四百年目の年にあたります。
少し余談になりますが、昨年十二月十七日の北日本新聞によりますと、利長が高岡城へ入城の際に西本願寺法主・准如に宛てた書状が新たに発見されたとのことです。この書状は、入城二日後の九月十五日の日付で、准如が利長に対し祝の品を送ったことに対する返礼状とのことです。なぜ准如が利長に祝を送ったかというと、「自らが率いる西本願寺に対して兄の教如が7年前に東本願寺を創建し、門徒集団が分裂したことが背景にあるとみられる。北陸の門徒を自派に引き入れようと、兄弟が前田家にさまざまな接近を図っている。慶事に准如がすかさず贈り物をし、利長の歓心を買おうとした政治的行動との見方が強い」と報じています。この事からも、西本願寺と加賀藩との関わりが見られます。
また、本願寺八代蓮如上人が創建したといわれ、国の重要文化財に指定されている雲竜山勝興寺は、現在文化庁による平成の大修理を進めている大寺院ですが、藩政時代には藩主前田家や本願寺並びに公家との関係を深め、近代にいたるまで大きな力を持っていました。この事も高岡に西本願寺派の寺院が多いということに繋がります。

また、金沢では利休や秀吉と交友の深かった初代利家や二代利長が茶の湯を定着させた後、三代利常に招かれ加賀の茶の湯を育て上げたのが、裏千家四代仙叟宗室です。大樋焼の大樋長左衛門や釜師の宮崎寒雉が仙叟の指導の元名品を生み出しています。
ところで、この稿の為にいろいろ調べますと、「天正十六年二月・利休の茶会に招かれる。」「文禄二年十月・自宅で茶会を開き、徳川家康を招く」など、利長と茶道との関わりがいろいろ分かって来ました。また、先に高山右近を利休七哲の一人と紹介しましたが、「茶道四祖伝書」によると利長も利休七哲の一人と書かれており、同じ七哲の蒲生氏郷や細川忠興との交流なども知ることが出来、利長の今まで知らなかった部分を知ることが出来ました。(すべてインターネットよりの情報です。)

利長に関する話が長くなりましたが、前記の事からも現在の高岡の茶道人口は「裏千家流」が一番多く、次に「藪内流」そして「表千家流」といわれています。
藩政時代から商工都市として加賀藩の経済活動を担ってきた高岡では、明治初期には早くも財界の数寄者十数人による『清風会(せいふうかい)』が結成されています。その後、裏千家一三代の圓能斎家元の肝いりで『和楽会(わらくかい)』が発足し、昭和九年(一九三四)には一四代淡々斎家元の命名により『淡敬会(たんけいかい)』が発会しています。
高岡の茶道を語るときに忘れてはならない茶人は在田宗貫(ありたそうかん)(一八八四~一九七三)です。宗貫は一九才の時に父に伴われて裏千家一三代の圓能斎に会って以後七〇年にわたって三代の家元に通い続けました。晩年に北陸で初めての奥秘皆伝正教授・今日庵老分(ろうぶん)に列し淡岡斎の号と利休頭巾を授けられています。また、裏千家茶道には全国にいろいろの会がありましたが、宗貫など幹部役員が中心となって、家元と相談して昭和一五年(一九四〇)に「淡交会(たんこうかい)」という家元直轄団体を組織化されました。翌年淡交会高岡支部を発足して戦時中の厳しい環境の中で茶道発展の為に尽くしました。その後、昭和四六年(一九七一)に淡交会高岡支部の三〇周年を記念して、宗貫自ら設計した茶室『松聲庵(しょうせいあん)』を高岡市に寄贈し高岡古城公園の中に設置しています。現在瑞龍寺の境内にある茶室の側に利休頭巾の宗貫の銅像がひっそりと建っています。
近年では、富山県西部の政治経済人を中心にした男性だけで組織する『高岡又新会(たかおかゆうしんかい)』が昭和六三年(一九八八)に発足し、約五十人の会員が富山県内の旧家を会場にして年に四回の例会を行っています。昨年五月には、その二〇周年記念の茶会が鵬雲斎大宗匠を招いて国宝瑞龍寺で開催されています。
また、淡交会高岡支部の青年部活動も活発に行われており、いろいろな新しい試みをしていることがホームページやブログで見ることが出来ます。

「金屋町石畳通り 鐵瓶屋」

 富山県高岡市金屋町1-4

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高岡銅器の展示・販売

「高岡銅器展示館」

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