③製造技法について(1)

高岡銅器の製法は基本的に鋳造(ちゅうぞう)という技法です。鋳造とは粘土や砂など混ぜ合わせた耐火性の素材で作った型(鋳型(いがた))に熔けた金属を流し込んで作る製造技法です。使用する金属は青銅・黄銅・アルミニウム・亜鉛合金・鉄などが主ですが、金や銀の製品も鋳造で作ることが可能です。現在では、高岡には十種類以上の製造技法があり、作る製品の品質や数量などによって作り方を選んでいます。
この内で、国の伝統的工芸品に指定されている技法に、①焼型鋳造と②双型鋳造と③蝋形鋳造の三種類があります。

これは、鋳型を作る方法すなわち型の中に金属が流れ込む隙間をどの様にして作るかということの違いで、それぞれが百年以上も前からある技法ですが、とても合理的な製法となっています。以下にその原理だけを簡単にご説明します。

①焼型鋳造 作りたい製品の形を粘土や木で製作し、この上に粘土と砂を混ぜた  真土(まね)をかぶせて型取りをした後乾燥させたものが、鋳型となります。これをさらに焼き固めてから金属を流し込みます。
使用する材料は、主に唐(から)金(かね)(青銅)で立体的な置物や花器などの少量生産に適しています。

②双型鋳造 鍋・釜を作る製法で、作りたい製品の断面の形を薄い板で作り、これを上下で押さえて回転させることにより鋳型を作ります。
使用する材料は、唐金と銑鉄があります。因みに風炉は唐金で、釜は鉄で作りますが、同じ技法です。

③蝋型鋳造 蜜蝋(みつろう)と松脂(まつやに)を混ぜ合わせたもので必要な形をつくり、これを真土でくるんで鋳型を作り、その後乾燥させた型を焼き固めると中の蝋が溶けてでるので、その隙間に熔けた金属を流します。基本的に一品作品となり、香炉やなどの細かい細工の製品を作ります。

以上が伝統的技法ですが、現在ではこれらを改良した鋳造法で高い品質の製品を作っています。また一番多く用いられる技法は生型鋳造ですが、前述の三つの技法と比べ型を焼かずに鋳型を作ることで工程が短縮されるので、現在高岡では量産される製品がこの方法で作られています。この場合の材質は主に真鍮(しんちゅう)(黄銅)となります。
 

高岡では、茶道で使う殆どの金属製品を作っています。まず茶釜では、第一人者は畠春斉(はたしゅんさい)です。

初代は一般の金属製品を作ることが出来なかった戦時中に文部省の芸術保存作家に認定され、特別に茶釜や鉄瓶を作ることを許されています。その後、日展や日本伝統工芸展に入賞を重ね、また長く日本工芸会富山支部の幹事長を務め富山県の伝統工芸の発展に寄与されています。

二代畠春斉は若くして父に師事し芦屋釜や天命釜の写しはもとより、自ら考案した縦筋を配した独特の釜を日本伝統工芸展に発表し続け高い評価を得て来ました。また日本工芸会理事並びに日本工芸会富山支部幹事長を務め、現代の日本を代表する釜師として益々今後が期待されていましたが、残念ながら昨年(平成十九年)六十三才で病没しました。
現在高岡の釜師として活躍しているのは日本工芸会正会員・般若勘渓(はんにゃかんけい)です。
当初は唐金風炉や水指などを製作し日本伝統工芸展に出品していましたが、近年は茶釜も数多く制作しています。

特に古作釜の研究を続け多くの写しを制作して来た結果、今までに作った形は三百種類以上にのぼるということです。また、宮内庁より正倉院御物の複製を依頼され、高度の轆轤(ろくろ)技術を駆使して砂波理加盤(さはりかばん)や黄銅合子(おうどうごうす)を制作しています。

勘渓の兄の般若宗勘(はんにゃそうかん)は国指定伝統工芸士として、また高岡市伝統工芸産業技術保持者として、永年にわたり唐金で風炉や花入れなどを制作続けています。

末弟の般若保(はんにゃたもつ)は「鋳分(ふきわけ)」という技法により平成五年の日本伝統工芸展で最高の総裁賞を受賞しています。鋳分とは、異なる材料を別々の坩堝で溶解し一つの鋳型に時間差で流し込むことにより独特の模様を浮き出させる特殊な技法で、同じものが二度と出来ない貴重なものです。兄の勘渓と同じ工房で茶釜も制作しており、また長男の泰樹(たいじゅ)も父に師事し、茶釜や「鋳分」の作品で日本伝統工芸展に入選すると共に近年は伝統工芸日本金工展で連続受賞し、昨年日本工芸会正会員となっています。
増山馨鉄(ますやまけいてつ)は初代が大阪の大国藤兵衛に師事し、茶釜や鉄瓶を制作しています。

二代馨鉄は日本伝統工芸展で新しいデザインの釜を発表して入選を重ね、現在日本工芸会正会員として活躍しています。
以上の他に、一ノ瀬宗辰(いちのせそうたつ)、金森紹栄(かなもりしょうえい)・浄栄(じょうえい)、藤井宗喜(ふじいそうき)、一ノ瀬宗也(いちのせそうや)、黒瀬宗康(くろせそうこう)などが茶道具を作る作家として名前が知られており、茶釜の他に風炉や花入れなどの専門店として多くの作品を制作しています。

「金屋町石畳通り 鐵瓶屋」

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高岡銅器の展示・販売

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