第2回 鉄瓶と健康②

④鉄と健康について

最近になって、鉄分が健康に良いということで鉄瓶が見直しされる様になり、少し息を吹き返した様です。次ぎに鉄分がなぜ健康に良いかということにつきまして、簡単に述べてみたいと思います。(これからは文献の受け売りです。) 
通常、人の体内には、3~4グラムの鉄が存在します。その内70%は血液中で酸素を運ぶ役割をしているヘモグロビンに使用されています。あとの30%は貯蔵鉄として肝臓に蓄えられています。この時鉄が不足するとヘモグロビンの量が減り、その結果体内に酸素が十分に行き渡らなくなります。この状態を「貧血」といいます。もちろん他にも貧血の原因はいくつもありますが、鉄欠乏症貧血が全体の50%を占め、一番多く見られるということです。 
通常、人は一日に1,5ミリグラムの鉄を消費するといわれています。これは、髪の毛や爪や汗によって消費されるものと、あらたに赤血球を作るために使われるためです。 
そこで、体内に1,5入りグラムの鉄を摂取しようとすると、1日の食事中から12ミリグラム以上の鉄分を摂取しなければなりません。

これは鉄の体内への吸収率が悪いため、食べた分の一割しか吸収しないためです。食物中の鉄は、ビタミンCと同時に摂取すると吸収率が良くなるそうです。これはビタミンCには、アスコルビン酸という鉄吸収促進作用のある物質が含まれているからです。

ビタミンCが無いと食物中の鉄は腸液と反応して沈殿を作ってしまい、吸収率がかなり悪くなります。その為偏食は非常に悪影響となるのです。 
ところで、現代日本人の多くは、必要摂取量がとれていないそうです。その為「鉄欠乏性貧血」になっている人が多くなっています。有る調査では日本人女性の45%以上が澈欠乏状態である「隠れ貧血」の状態にあると言われています。
また近年はスポーツ医学の発展に伴い、スポーツと貧血の関係も重要視され、スポーツクラブに所属する男子高校生に対して調査した結果が発表されています。その結果から、貧血と診断された生徒はいないものの、潜在性鉄欠乏状態にあるとされた生徒は、なんと全体の90%弱にも上っていたそうです。高校スポーツ選手の殆どが、鉄欠乏性貧血の予備軍になっていることは、今後の大きな問題となるでしょう。                            

⑤貧血を解消するには

貧血を解消するには、とにかく鉄分の多い食物を食べることです。例えば、レバーやほうれん草、マグロ、アサリなどの貝類、ひじき等です。 特に、肉や魚などの鉄分は身体に吸収されやすいものです。理由は一度魚などが海草などから吸収し、貯蔵している鉄分をそのまま食べるからです。植物などからの鉄分は体の中で分解しにくいのだそうです。 
しかし、鉄分の多い食品ばかりをたくさん食べても、実施には吸収される鉄が必ずしも多くなるとは限りません。偏食をしているとせっかく取った鉄分は吸収されないまま排出されてしまいます。

先ほども言いました通り、鉄はビタミンCと一緒に取ると非常に吸収率が良くなります。レバーを食べるときには、一緒に野菜やレモンなども食べるようにすれば吸収が良くなるということです。 
ただ、そんなに鉄分の多いものばかりも食べていられないと言うこともあります。そこで登場するのが、鉄鍋や鉄瓶です。 よく「鉄鍋は調理中に鉄が溶け出すから身体にいいんだ。」と言うことを聞くことがあります。これは本当のことなのでしょうか。
実は以前にNHKのテレビ番組「ためしてガッテン」でこの実験をしていましたので、内容を報告します。 
まず1回の調理で、約1.5ミリグラムの鉄が調理中に溶け出すそうです。1日の必要摂取量の12ミリグラムのうち、鉄鍋で調理するだけで4,5ミリグラムの鉄を摂取できます。鉄鍋だけではすべての必要量はまかなえませんが、不足分を補うには十分な効果があります。 
また、鉄鍋から摂取する鉄は、食物から摂取するよりもかなり吸収率がよいことが「ためしてガッテン」の実験で証明されています。これは4種類の素材から採った鉄分を、同じ量だけ餌にまぜ、貧血状態のマウスに4週間与え続けてその回復状態を調べたものです。ちなみに4種類の鉄分とは、鉄瓶、レバー、きなこ、ほうれん草よりのものです。 
そうしますと、同じ量の鉄分を与えたにもかかわらず、マウスの回復状態はかなり違ってきました。
4週間後に鉄瓶からの鉄分を摂取したマウスの赤血球の数は、ほぼ100%回復しましたが、他の食品よりの鉄分を摂取したマウスの赤血球の数は、70%~80%にとどまっていたということです。 この結果は、鉄瓶から溶けだした鉄が、レバーなどよりも、吸収率が良いということを証明しています。 
この理由として、鉄瓶から溶け出す鉄は、体に吸収される形そのままの、2価の鉄イオンの為ということです。食物中の鉄は、化合物になっていて、胃酸等により3価の鉄イオンとなり、その後にビタミンCに含まれるアスコルビン酸等の還元物質の働きによって、やっと体に吸収できる形になるためその分吸収率が悪いと言うことです。 
鉄瓶や鉄鍋から鉄が溶け出すというのは本当の話で、しかも、最も体に吸収されやすい鉄分だということが、証明されたわけです。
鉄分の吸収の話はこれくらいにしまして、最後に鉄瓶を乗せる「五徳」の語源についての話をさせていただきます。                            

⑥五徳の語源

鉄瓶を使用するときに欠かせないのが五徳である。字を見ると一見意味がありそうな感じであり、無理に五つの徳を上げる向きもあるようですが語源は次の通りです。
昔から囲炉裏で鍋や釜で煮炊きをするときは、自在鉤を用いるか又は五徳を用います。五徳は初めは三足で、輪を上にして用いました。 これは古くは竈子(くどこ)と呼ばれたもので、古代の鼎や鎌倉時代の足つきの湯釜に由来するものです。
実際に五徳が発生したのは安土桃山時代と思われる。すなわち、茶の湯の始まりと共に室内で用いる小型の炉「風炉」があらわれまして、この時「くどこ」を今までとは逆にし、爪を上にして使われるようになりました。これにより「くどこ」を逆にして「ごとく」と呼び、五徳の文字を充てたものです。 このことは、煎茶が始まった頃の宝暦年間(1750年代)の、お茶の本にも書いてあることですので、間違いはないものと思っています。                            

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